『クサビハンガー(PAT.P)』開発秘話

私たち足場研究所が考案した数々の製品が形になるまでの過程をお届けするこのコーナー。
第一弾は足場チャンネルでも注目をいただいている『クサビハンガー(PAT.P) 』の開発経緯について紹介させて頂きます。

『クサビハンガー(PAT.P)』開発経緯

職人さんが重いクサビ支柱を苦労しながら何度も何度も荷揚げしている風景。
建築現場ではごくありふれた始まりのシーンです。

しかし、この工程を通らねば工事は始まりません。
新しく建物が建ったり、外壁を改装をしたりする都度、その風景は繰り返され続けるのです。

朝起きたら顔を洗う、歯を磨く。そんなことに疑問を抱くことはあまりありません。
なぜでしょうか?
それはきっと「当たり前のこと」だからです。

では、このクサビ支柱の荷揚げ作業はどうなんだろう?
今のこの工程は当たり前のことなんだろうか?

この『クサビハンガー(PAT.P)』を作ろうと思ったキッカケは、日々どこかで必ず行われているこの作業にそんな疑問を感じたからです。

荷揚げ作業をもっと楽に、安全にすることはできないか?
そんな気持ちから『クサビハンガー(PAT.P)』のイメージが固まったとき、これは早急に世に出さなければと考えました。

初代『クサビハンガー(PAT.P)』

二代目『クサビハンガー(PAT.P)』

開発当初はうまく刺さればよいと思いましたが、一度に揚げられる本数や使いやすさ、安全性のことを考えていくと問題点がどんどん見えてきました。
新しいアイディアを盛り込みつつ、1つのハンガーをどうにか形にするには1ヶ月ほどを要しました。
トライアル・アンド・エラーの繰り返しです。

三代目・四代目『クサビハンガー(PAT.P)』

五代目・六代目『クサビハンガー(PAT.P)』

この頃には概ね現在の形が見えてきました。
安全性の確保のため、刺したクサビ支柱を固定するためのロック機構を追加しています。
六代目はロック機構を、ワイヤーから更に強固なバーに変更してみました。
脱落の防止とともに、引揚げ中に支柱を安定させるための工夫です。

七代目『クサビハンガー(PAT.P)』

脱落防止、引揚げ中の姿勢安定、荷降ろし時の使いやすさなど、更に試行錯誤を繰り返します。
ワイヤー、バーに続いて、七代目にはピンによるロック機構を盛り込んでみました。
基部のピンの付いたバーををくるりと回すことでクサビ支柱を固定します。

八代目『クサビハンガー(PAT.P)』

八代目になるといよいよ現在の形に近づいてきます。
複雑化による強度やメンテナンス性の問題、量産コストの問題を再検討し、機械的なロック機構はオミット。
クサビ支柱の形状に合わせた溝にはめ込むことで、姿勢の安定をはかりました。
自分の現場だけを便利にする研究であれば、七代目までのつくりで十分でした。
ですが、広く普及させる前提で考えると、メンテナンス性やコストは絶対に無視できない要素なのです。

九代目『クサビハンガー(PAT.P)』

いよいよ九代目の試作品です。
懸架部分が板状だった八代目では強度が心もとなく感じたので複数の骨組みで基部を支えるつくりに変更しました。
概ね現行のものと同様の形状です。

十代目『クサビハンガー(PAT.P)』

十代目『クサビハンガー(PAT.P)』最終形態です。
強度試験もバッチリ。縦方向でクサビ支柱を刺した場合の耐久衝撃は1tまで耐えられます。
バーによりクサビ支柱を固定する機構を再考しました。
2本吊、6本吊、8本吊の3種類をラインナップしています。